ブラジルの一年はカーニバル後から

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カーニバルの真っ只中にこの原稿を書いています。さきほどリオのパレードが始まったところです。
リオやサンパウロのパレードは商業的な要素が年々強くなっている印象を受けます。サンパウロのあるチームは今年タワシの大手メーカーがスポンサー。行進曲の題名は「輝く女性-ブラジルの社会文化発展における女性の力-」でした。「磨く=輝く」でうまくこじつけられていますが、中には少々無理のある設定を強いられたと思わざるを得ないチームもありました。

 コンクリート造りの閉ざされた空間で行われ、ルールや審査の縛りがあり、入場料が決して安くはないリオやサンパウロの見世物的パレードよりも、ブラジルのカーニバルは街中の自由気ままな楽しみにこそ真骨頂があると言えます。リオにしてもパレードより市内各所で行われるお祭り騒ぎの方がずっと多くの人出があり、ポピュラーです。また、カーニバルの音楽といえばサンバ、踊りは軽快なステップいうイメージがありますが、それは地域によりけりで、例えば私が住む北東部ではフレヴォ(写真)と呼ばれる音楽・踊りが最も普及しているスタイルです。

 ここ人口80万のナタル市では市内5カ所に「カーニバル拠点」が設置されています。パレード見物はもちろん、にぎやかな楽隊と一緒に練り歩いたり、全身泥まみれになって楽しんだりできます。さきほど自宅近くの旧市街で行われていたパレードは6つのインディオ部族が参加していたもので、横笛を基調とする抑揚の乏しいリズムが奏でられ、同じステップを繰り返すいかにも儀式的な動きが目に付きました。第一印象は「地味で怖い」。参加者の笑顔がなぜかあまり見られず音楽と踊りに躍動感がほとんど感じられなかったからですが、この暗いインディオ流もブラジルのカーニバルの一つの表情なのかもしれません。

 さて、こうしてカーニバルにも色々あるように、カーニバルに対するブラジル人の態度も様々なようです。ある調査によると、約6割の人が「カーニバルは好きでない」と回答。街中で騒いだり、パーティーに出かけると答えた人はわずかに2割程度だったという意外な結果も明らかになっています。とはいえ、毎年のカーニバルがいまでもブラジル社会の大きな節目であることには違いありません。2012年が始まってこの一ヵ月半、仕事仲間に何かを依頼したり、取引先と交渉の席に着く度にいったい何度、「ブラジルはカーニバルが終わらないと歩き出さないから」「ブラジルの一年はカーニバル後から始まるから」などと聞かされてきたこと。


リオグランジドノルテ州ナタル市にて 2012年2月18日 小林大祐

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