伯国紙幣事情

「3レアル紙幣」をご存知でしょうか? ブラジルでは実際には存在していませんが、偽造され時々所々で流通しているといった話があります。150円程度の価値の紙幣を手間ひまかけて偽造してどうすると突っ込みたくなる一方、150円でも貴重と感じられる生活を余儀なくされている人もまだまだ多いのだという事実を突きつけられます。こういう話を聞くとブラジルは広く様々な現実を抱えていると改めて痛感させられます。

 お金の話で言えば、昨年末から新紙幣が流通しています。ただし、私の住んでいる州ではほとんど見かけません。それが先月サンパウロ出張の際にATMでお金を下ろしたところ、すべて新紙幣だったので驚きました。やはり、都会と田舎には「時差」があるようです。その新紙幣は旧紙幣より印刷コストがだいぶ高いだけあってサイズは一回り大きくなり、手触りもなかなか。サッカーのW杯、そしてリオ五輪を控え、「世界の目」を意識した通貨に仕上がっています。偽札製造防止の面でも優れているそうですが、そもそも新紙幣が出回っていることを知らず「3レアル紙幣」が現実に存在すると信じているような人には新紙幣の方が“偽造”と疑われる可能性すらあります。

 さて最近はATMを狙う強盗が多発していることを受けて、紙幣の強盗対策も発案されています。それはATMが破壊された瞬間にピンク色のインクが飛び散る仕組みで、その液体が付着している紙幣は通貨価値を失うという規則が公布されました。すると、手持ちの現金にそれらしき液体が付着している紙幣を銀行に持ち込んだ人が殺到しました。しかし分析の結果、実際にその防犯用インクが確認できたのは回収された紙幣全体の5%に過ぎず、残りは他の物質だったことが判明、中でも多かったのは「口紅」だったそうです。どうしてそんなに多くの紙幣に口紅が付着しているのでしょうか。
ブラジルの紙幣には以前からメッセージめいた文章がボールペンで落書きされていることがよくあり、その内容を解読する面白さがあったりしますが、それと同様にルージュのルーツを探ってみるのもなかなか興をそそられます。

リオグランジドノルテ州ナタル市にて 2011年8月15日 小林大祐

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