「オブリガード、サンキュ!」 オバマ

  ブラジルにやって来たアメリカのオバマ大統領。一人のミーハー的なファンの目から見て、純粋に格好良かったです。20日にリオ市立劇場で行われた演説。ノーネクタイでさっそうと壇上に現れ、軽くステップを踏んでマイクのある台に上ります。2,300人の観衆の大声援に「オブリガード、サンキュ」と2,3度繰り返し大きく手を振って対応。注目の出だしは「オイ! リオデジャネイロ」でした。ポルトガル語の「オイ」は親しい人へのあいさつです。ここでじっくり間を取ると、続けて「アロー! シダーデ・マラヴィリョザ」。リオデジャネイロの別名であるシダーデ・マラヴィリョザ(すばらしき都市)の名で呼びかけ、さらに観衆を引き付けます。再び一息おいて今度は「ボア・タルデ、トード・ポヴォ・ブラジレイロ(こんにちは、ブラジルの皆さん)」――。この3段構えの切り出し、そして観衆を引き込む絶妙な間の取り方は実に見事でした。あたかも目前で見たかのように熱く語っていますが、目にしたのはニュース映像のみです。オバマ流演説の様式美とも言える映像をユーチューブで繰り返し見てしまいました。

  本来この演説はリオ市立劇場前のシネランジア広場で一般大衆向けに演説を行われる予定でした。ベルリン、カイロに続く外国での一般向け演説は多くのブラジル市民の目に直接焼き付けられるはずだったのですが、リビア情勢と天気が考慮され、劇場内に舞台を移すことになりました。日曜日だったこともあり、私もできればリオまで飛んで歴史的な場面に立ち会ってみようかとも思っていたのですが、日本で大災害が発生し、もちろんそれどころではありませんでした。

  オバマ大統領は夫人と娘二人も一緒に連れてきていました。アフリカ系の国とも言える一面も持つブラジル。その社会と文化に関心があったのかもしれません。実際、サンバやカポエイラ(アフリカルーツの格闘技)も鑑賞していました。「ブラジルにも黒人がいるのか?」と言ったとされるブッシュ前大統領とはまったく違います。一家はブラジル映画「シティ・オブ・ゴッド」で有名になったファヴェラ(貧民街)にも足を運びました。そこで待ち受けていた青少年たちが「Yes, we ALSO can」という横断幕を掲げていたのが個人的にとても印象的でした。今回のブラジル訪問はアメリカ製品のブラジルへの輸出販売の促進という実利的な色合いが濃く、またリビアと日本の情勢が重大局面を迎えている最中ということもあり、国内外のメディアはあまり好意的に報じていませんでした。しかし、「Yes, we ALSO can」はとても良いフレーズです。少なくともファヴェラの青少年たちには大きな希望を与えてくれた訪問だったと思っています。
(リオグランジドノルテ州ナタル市にて 2011年3月20日 小林大祐)

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