首都ブラジリアにおいて影響力を持つ50人リスト――。アメリカの雑誌「GQ」のブラジル版11月号を立ち読みしていたところ、興味深い特集を目にしました。年末の雑誌といえば「今年話題となった人物」を選出してその活躍を振り返るといった企画が定番。そうした横並び主義から「GQ」は抜け出してひと工夫を凝らしたようです。
リスト作成の指針を与えたのは著名コラムニストやベテラン政治評論家ら計10人で、ジウマ大統領、ルーラ前大統領といった政治家で選ばれているのは16人。他に弁護士、経済学者は分かるとして、レストラン経営者、宝石商といった職業の人たちまで選ばれているあたりがユニークです。また50人の出身州で一番多いのはミナスジェライス州で15人を数えました。
日系の顔も一人だけ発見。その職業は政治家でも軍人でも寿司職人でもなく、Hélio Nakanishiさんという美容師でした。誌面ではサルネイ元大統領(現上院議長)の下につけるポジションで目立っています。HélioさんはブラジリアでInstituto de Beleza HelioDiff という美容院5店舗と技術センターを所有。30年以上も首都の美容業界の中心で活躍されている一方、慈善活動に熱心であるところも評価されているようです。
記事によると、外国からの要人が儀式や晩餐会などで訪れた際、イタマラチ宮が連絡を取るのがHélioさんのところで、ダイアナ妃やオバマ大統領夫人に対応したのもそうだったそうです。Hélioさん本人はあのコロル大統領の就任日にその髪にジェルを塗って整髪した人物と書かれています。
パラナ州ロンドリーナ市生まれ。しかし故郷から離れたブラジリアのある地域で将来活躍することを小さいころから予期していたそうです。その理由は「苗字が中西。つまりブラジルの“中西”部こそが運命の地だった」と他の雑誌で語っているのを見ました。気の利いたユーモア。このあたりもカリスマ美容師ならではでしょうか。
日系の美容師では他にもジウマ大統領のヘアスタイリングを担当するCelso Kamuraさんが有名でメディアでよく見かけます。「カリスマ美容師といえば日系人」というイメージがブラジルでは根強いかもしれません。
2012年12月2日 リオグランデドノルテ州ナタル市 小林大祐