ブラジルで「黄色」人種が州人口の割合の中で最も多くを占めている州はどこでしょうか?――。2010年に行われた国勢調査のデータによると、北東部のピアウイー州です。同州の2.1%に当たる人々が今回の調査の際、皮膚の色を尋ねられて「黄色」と答えたそうです。回答は「自己申告制」であり客観的とは言い難いのですが、日系人が集中するサンパウロ州、パラナ州を上回るとは驚きです。
なお、ブラジル全体では「黄色」と申告した人が総人口の1.1%を占めました。10年前の調査では0.45%でしたから2倍以上も黄色人種が「増えた」ことになります。黒人、混血の割合も同様に増加し、代わりに白人層が前回比6%減の47.7%と初めて過半数を割り込みました。有色人種率が上昇するのは自然の摂理です。しかし出生証明書に「混血」と記されているにもかかわらず、「黒人」と申告した人もいたとか。「黒人」申告率の増加はオバマ米大統領ら黒人の著名人が各分野で台頭している世相を反映しているのかもしれません。ブラジルでは大学入試等の際に黒人・混血層に対して特別枠が割り当てられる優遇処置などがあるため、出生時は「白人」であっても後に「混血」(あるいは「黒人」)に成り変る人もいます。
この他にも色々興味深い結果が出た今回の調査ですが、何よりもこれまでの「ブラジル像」とは明らかに違う姿がそこに浮き彫りになりました。かつてのブラジルと言えば、若い世代が多いながら貧困で識字率も低く、子沢山でありながら乳幼児の死亡率が高く、農村から都市へ出稼ぎする人が目立ちました。それが時を経て経済成長を遂げ保健・医療・福祉が改善し、先進国同様に少子高齢化への道を歩み始めているようです。
今回の調査結果を踏まえ、「かつて『未来の国』と呼ばれたブラジルに未来が到来した」。そのように分析していたのはフォリャ・デ・サンパウロ紙でした。ただし、地域格差、治安、下水道網の整備等に多くの課題を残しているのも事実です。ブラジルはいま、「次の未来」を求めて新たなスタートを切ったと言えるかもしれません。
※上地図の説明:ブラジルの人種分布図で、色が濃い地域ほど黒人、あるいは混血の占める割合が高い。
(リオグランジドノルテ州ナタル市にて 2011年5月1日)