次期大統領はルーラ夫人?

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人生において現職の国家元首を実際に見る機会はそうはないことです。わたしは奇遇にも3度あります。ときの小泉首相、そしてブラジルとアルゼンチンの大統領。ブラジルは前政権を率いたカルドーゾ氏、アルゼンチンはクリスティナ・フェルナンデス現大統領の夫で前大統領のキルチネル氏です。

ブラジル大統領選挙の本番を目前に控えた10月27日、そのキルチネル氏の訃報が当地で大きく報じられました。享年60歳。早過ぎる死でした。痩身ながら独特のオーラを放っていた同氏。妻のフェルナンデス大統領の任期が切れる2011年の大統領選で再選を目指すともみられていたそうです。直接選挙を通して「夫→妻」という形で大統領が引き継がれたケースでさえ稀であったのに、さらに「夫→妻→夫」となっていたら……。それこそ歴史的な出来事であったでしょう。

 

さて、ブラジルの大統領選挙は今回、“各国移民の国”らしく、イタリア系2世の野党候補(男性)とブルガリア系2世の与党候補(女性)の決戦となり、ご承知のとおり、後者の勝利で幕を閉じました。女性候補の大票田となったのは貧困層の多いブラジル北東部でしたが、ここにどうも腑に落ちないことがあります。と言いますのも、彼らと同じように貧しい境遇の出身なのは男性候補の方で、女性候補は幼少時から休みともなれば飛行機で海岸リゾートに旅行し亡父が残した遺産には15を数える優良物件があったと言われているような育ちだったからです。普通に考えれば貧困者層の有権者は男性候補者の方に心情的に流れそうですが、恐らく、そういった情報は彼らの耳にはあまり届いていなかったのだろうと思います。

 

もっとも圧倒的な票を獲得したとはいえ、北東部の奥地での女性候補=次期大統領の認知度は最後までいまひとつだったようです。さきほどもラジオニュースを聞いていたところ、「ルーラ大統領の“夫人”に投票したという人が相当数に上っていた」と。ルーラ大統領は支持率8割超を誇ります。特に情報の乏しい田舎では「ルーラの“妻”」という誤解が最高のマーケティングだったのでしょう。彼らの目からみれば、「夫→妻」にバトンが渡るだけなのかもしれません。

 

故キルチネル氏同様、ルーラ大統領も次の次を狙っているといううわさが根強く聞かれます。“妻”の今後の仕事ぶり次第といえ、4年後の2014年に存命であれば3回目の大統領当選も十分にあり得えることでしょう。

 

筆者: 小林大祐

 

 

 

 

当選したピエロ候補に司直の手

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前回コラムで取り上げた、自称「愚か」なピエロ候補チリリッカさんの選挙結果は果たしてどうだったか?―――。
予想を上回る135万票を獲得し、選挙区サンパウロ州の連邦下院議員枠でトップ当選。実に州内有権者の6%が彼に投票しました。
「チリリッカに投票して! (ブラジルの政治が)どうせこれ以上悪くなることはないのだから」
これがチリリッカさんの選挙広報テレビCMでの決めゼリフで、一世を風靡する流行語にもなりましたが、多くの有権者がその言葉に共感を示したとも言えます。
今回の選挙にはチリリッカさん以外にも歌手、俳優、サッカー選手など数々の有名人が出馬し話題になりました。しかし、大半は知名度に頼った印象も否めず、あえなく落選。ブラジル国民も決して“愚か”ではなかった証拠と言えます。そんな中でブラジル選挙史上に残る得票数を獲得したチリリッカさん。当初こそは泡沫候補と揶揄されながら大勝利を収めた背景には、その風刺とユーモアに満ちた独自のマーケティング戦略の成功がありそうです。
 しかし――。選挙後、彼にある疑惑が浮上し、その当選の如何は司法の判断にゆだねられることになりました。その疑惑とは、彼が読み書き出来ない“文盲”ではないかというものです。文盲率10%前後のブラジルでは選挙に立候補する際はもちろん、運転免許に資格取得など様々な機会においてまず「読み書き可能である」ことが前提条件であり、それを事前に問われます。彼はそれに対して“虚偽の申告”をしたのではないかとの告発があったのです。
 果たして最後にどんなオチが付くのか。10月31日の第二次投票に持ち込まれたブラジル大統領選挙の行方と共に注目されます。

 

【筆者プロフィール】 小林 大祐 

1998年早大社会科学部卒。

ブラジル邦字新聞社「ニッケイ新聞」元記者。

現在建築コンサルタント会社勤務、ブラジル北東部駐在、

JICA技術協力プロジェクト従事。


 
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