香水ひかえてくれないか

 今年減って欲しいもの――。私生活でのそれはブラジル生活で増えつつある体重です。一方業務では3つあります。それはオフィスでの「間違い電話」と「見知らぬ来訪者」と「プロジェクトの運転手の香水使用量」です。
まず、間違い電話に関しては昨年一日2.3回は受けたでしょうか。水道工事の依頼を受けたり、閉店時間を尋ねられたり……。また、同じく仕事の流れを中断させてしまう見知らぬ来訪者の存在も日常化していました。勤務先が州政府の行政機関であるとはいえ、北東地方だけに流れる空気はゆるく(入館チェックも甘く)、物乞いの人、自作を売りに来る放浪画家、何やら御託を並べ寄付を要求してくる人、と招かざる客は枚挙に暇がありません。
すでに常連と化し、“顔パス”といいますか、定期的に役所に堂々と行商に来ることが許されている人が2人います。ひとりは時計売り、もうひとりは香水売りです。

 そこから分かったことはブラジル北東地方の人々は階層を問わず腕時計と香水が大好きである、という事実です。時計と香水にはぜいたく品のイメージがあり、貧困が深く根を張る北東地方にはそぐわないようですが、例えばプロジェクトの運転手は最低給与の約1.5倍(日本円で3万円ほど)の給与であってもこだわりをアピールしています。
日本から買ってきたプラスチックの腕時計をしている私に対し、「お前もこういうのをしなければ」とダメだし、金ピカの見るからに重そうな腕時計をみせてきます。時計はまだ周囲に迷惑がかからないので良いのですが、問題は香水です。現場が遠く長時間ドライブが多いため、密室空間で強い匂いを放つ香水を誇示されるのは参ります。ただ、香水をまとうのは彼らの「文化」であり、「香水控えてくれないか」となかなか言い出せずにいます。

 最近目にした報道によると、北東部の9割の家庭で香水が使用されているのに対し、サンパウロ州などの南部では4割程度で、国産の香水やコロンの55%は北東部で消費されているとのこと。暑さや雨の少ない北東部の気候が香水・コロンの使用を促しているようです。記事では政府からの貧困支援給付金が手厚くなってさらに北東部市場が拡大しているという分析も見かけました。身だしなみは飢えや子女教育にも勝るのでしょうか?
身だしなみや見た目に人一倍こだわるのはブラジル人の大きな特徴です。コスメティック市場は北東部に限らず全国的に成長。ブラジルのコスメティック市場規模は昨年、日本を抜きアメリカに次ぐ世界2位に躍り出ました。
私がブラジルに初めて足を踏み入れた10数年前は化粧している女性は大変珍しく一部に限られていたように記憶します。それが元旦付けの全国紙によると、ここ3年でメークする習慣のない女性は半分以下の割合にまで減ったそうです。十年一昔、「BRICs」などとメイクアップされる前の素顔のブラジルが懐かしく思い出されます。

リオグランジドノルテ州ナタル市にて 2011年1月8日 小林大祐


 
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