ブラジル人の日本在住20周年セミナー

 

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730日 青山通りにある国連大学の国際会議場にて「ブラジル人の日本在住20周年」とのタイトルのセミナーが開催された。

1990年に改正施行された入国管理法にて、三世までの日系ブラジル人及びその家族の日本での在住就労が無制限に認められてから今年で20年目となるため、それを記念してのブラジル大使館主催のセミナーで、全国から在日ブラジル人や日伯交流の関係者が多数参加し、終日かけて行われた。

 

冒頭にて、ネーベス駐日ブラジル大使や、来日中のカルロス・ルビ労働雇用大臣、カルロス・ガバス社会保障大臣、また日本側からは細川厚生労働副大臣や藤村外務副大臣などからの来賓挨拶があった。その中で、長い間交渉を続けてきた“日伯社会保障協定”が昨日調印されたとの発表があり、両国にまたがって勤務履歴のある人の公的年金保険料の二重払いを解消できることになった。南米諸国の中ではブラジルが本協定の最初の締結国となった。

 

その後、ブラジル政府から日伯交流に貢献した各位に対する表彰状の贈呈が行われ、引き続き、4人のパネリストによる講演が行われた。各講演ごとに講演終了後、会場の出席者から質問を受け、補足説明をするという形式で行われた。

 

午前中の講演は「ブラジル人の日本在住20周年について考える」というテーマで、イシ准教授がブラジル側からの視点で、北脇教授は日本側の視点からそれぞれ講演があり、午後からはハタノ准教授による「在日ブラジル人子弟の教育」について、そして最後に山脇教授による「統合に向けた日本の移民政策」についての講演があった。

 

各パネリストの講演を通じてキーワードとなっていたのは、日本在住の日系ブラジル人は、もはや “出稼ぎ労働者”ではなく、永住をも視野に入れ、独自の事業展開も始めているブラジルからの“移民”と捉えるべきとの主張と、それにともない、一時滞在の外国人に対する“出入国管理政策”ではなく、生活者としての外国人であり“移民政策”を持って対応すべきであるとの提言である。その背景には、少子高齢化が進行する日本社会の活性化には、適切な外国人移住者の受入は必要であるとの認識がある。

 

講演中、耳慣れない「多文化共生社会」という言葉が繰り返し出てきたが、これは国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い対等な関係を築いて、共に生きる社会というもので、“郷入れば郷に従え”的な日本のこれまでの社会通念の転換を迫るものである。

 

ブラジル人労働者は、2008年のリーマンショックまでは、派遣業者を介在して日本社会との接触を保てていたが、ショック以降は、それまでの会社から解雇された者も少なくなく、彼らが、独自に再就職活動を始めたことや、子供が日本の公立学校へ入学したことにより、直接日本社会に向き会わざるを得なくなった。このために地元住民とのトラブルも発生するようになり、またあのエルクラノ君事件(1997年 小牧市での集団リンチ事件)に見られるような悲劇も懸念される。こうした問題を払拭するためには、多文化共生社会への基本法や担当行政組織、また日本語教育をはじめとする日本社会への適合促進のための施策が、今求められているというのが結論であった。

 

日本で生まれ日本で教育を受ける在日日系ブラジル人の子供は、もはや“日系ブラジル人”ではなく“ブラジル系日本人”であり、今後の日本のグローバル展開の中で、必要とされるバイリンガル能力を持つ人材となりうるとの認識が必要なようだ。  (201081日  理事 岡本健一 記)


 【パネリスト】

    武蔵大学准教授 アンジェロ・イシ (元新聞記者)

    東京外国語大学教授 北脇保之  (元浜松市長)

    近畿大学准教授 リリアン・テルミ・ハタノ

    明治大学教授 山脇啓造 (多文化共生社会論者)

<司会 東海大学准教授 小貫大輔>

 
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